「人生は航海だ」――
冒険を愛した船主による革命的な帆布が
ハイカラなデザインで現代によみがえる
動く総合商社と呼ばれ、一航海で千両もうかった、と言われるほど巨額の富を生んだ北前船。その船の帆に革命を起こしたのが、播州高砂(兵庫県)生まれの工楽松右衛門(くらくまつえもん)が発明した「松右衛門帆布」です。船頭の家に生まれ、遠い諸国での航海に夢と憧れを持っていた彼は、15歳で廻船問屋の船乗りになるため、当時、最も賑わった寄港地、兵庫津へ。24歳の時、船乗りの間で禁忌とされていた大晦日の夜間航海に出かけ、その勇気と大胆さ、判断力でめきめきと頭角を現します。
ところで、「北前」という呼び名。大阪や瀬戸内の人々が日本海を指した言葉で、富山では「倍の儲けが出る」ことから「バイ船」、東北では「ベザイ船」などと呼ばれていました。漢字で「弁才」や「弁財」とも書くベザイ船とは、船の形のこと。巨大な帆一枚を海風になびかせて帆走する姿が想像できるでしょう。
弁才船より以前の船に張られたのは、筵(むしろ)帆やゴザ帆で、耐久性に弱くすぐ破れてしまうのが悩みのタネでした。そこで登場したのが、どんな強風にも負けない革命的な「松右衛門帆布」です。
幼い頃から工作が得意で、材木を筏に組んで運送する方法を発明したり、蝦夷地の鮭と昆布で荒巻鮭の商品開発をするなど、創意工夫の人だった松右衛門。太い木綿糸を使い、厚くて丈夫な帆布を発明することで、船の帆走時間を短縮し、何日でも走り続けられるようになりました。彼の数々の功績に対し、江戸幕府は「工夫を楽しむ」という意味の「工楽」の姓を与えたのです。
この松右衛門帆を独自に再現し、港町神戸らしい上質なアイテムを送り出しているのが高砂市に本店を持つ「松右衛門帆」。丈夫な極厚帆布と、太い糸から生まれる独特な風合い。そして、胸がときめくカラーヴァリエーション。「人生は航海だ」のブランドコンセプトにふさわしく、「松右衛門帆」のバッグや小物には、いくつになっても果敢に冒険し続ける人を応援する松右衛門スピリットが息づいています。